IZUMIの技術力

和泉チエン

IZUMI SUPERTOUGHNESS KAI開発秘話

アメリカ代表からの要望

アメリカ代表からの要望

アメリカ代表チームから「東京大会に向けて、駆動抵抗をさらに低減したチェーンを開発できないか」との相談が寄せられたのは2019年春。開発チームは直ちに立ち上がったものの、本番まで残された時間は1年未満だった。さらにチェーンは工業製品であり、JISにより規格・寸法が定められているため、部品形状や板厚を極端に変えることはできない。
限られた条件の中で、改良余地を見つけ出すこと自体が容易ではなかった。数多くの制約の中で、駆動抵抗低減のために着目したのは「ブシュ」。ブシュは摩擦が最も発生しやすく、チェーンの円滑な屈曲に直結する重要部品の一つである。そこで駆動抵抗を下げるため、次の2点を対策として実施した。1点目は、継ぎ目をなくすための製法変更。従来のブシュは板材を曲げて筒状に成形するため継ぎ目が生じ、わずかな段差が抵抗の一因となっていた。これを解消するため、板曲げから鍛造へ切り替え、継ぎ目のないブシュを新規製作した。2点目は、表面処理の付与。鍛造ブシュの内面を研磨で整えたうえで、さらなる低摩擦化を狙った表面処理を施し、試作品をアメリカ代表に提供してテストを実施した。

自立するほどに固まってしまった試作チェーン

自立するほどに固まってしまった試作チェーン

しかし現実は想定通りに進まなかった。アメリカ代表が試作品を練習で使用すると、30分足らずでチェーンが固着する屈曲不良が発生。選定した表面処理材がチェーン強度を低下させ、円滑な動作を阻害していた。
その後、さらなる試作と検証を重ね、チェーン強度を維持しつつ摩擦抵抗を低減できる表面処理条件を確立。加えて強度を高めるため、新規製作したブシュは0.01mm単位で試作・組立・試験を繰り返し、最も強度が得られる寸法を選定した。最終的には0.001mm単位にまで突き詰めた。

その結果、駆動抵抗を20%低減。副次効果として、耐摩耗性およびチェーン強度の向上も得られた。1年未満という限られた時間の中で、可能な限りの最適化をやり切った。

抵抗試験結果

従来品
IZUMI-KAI

The smoothest chain ever

「今までで最も滑らかなチェーン」——アメリカ代表から届いた最初のフィードバックは、驚きとともに伝えられた。その後さらなるコメントが続くかと思われたが、プロトタイプを装着したアメリカ代表は、言葉以上に多くの結果で性能を示した。現在はアメリカ代表のみにとどまらず、日本選手を含む世界各国のトップ選手に使用され、好成績を支え続けている。
IZUMI-Vの発表から、まもなく半世紀。IZUMI-Vが築き上げてきた歴史と伝統、そして確かな技術基盤を礎に、新時代のチェーン「IZUMI-KAI」もまた、新たな歴史を刻み始めている。

IZUMI-KAI
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